IMRT?前立腺癌の放射線治療?
2019年9月12日の記事で放射線治療について触れました。
今回は前立腺がんに対する放射線治療について書いていきたいと思います。
前立腺がんについて
みなさんはがんと聞くとどういう印象を持つでしょうか?多くの人は余命宣告されて、余命が限られているとか、治らない病気といった印象を持つのではないでしょうか?
たしかに悪性度の高い(分裂速度が速い)がんに関しては、こういったイメージが正しいと思います。
しかしながら、前立腺がんは一般的にかなり悪性度の低い癌種となります。そのため、腫瘍の増殖も比較的ゆっくりであり、前立腺がんに罹患しているということに気づかないまま、生涯を全うする方もいると言われるほどです。がん以外の病気で亡くなった男性を解剖すると、70歳を超えた人の20~30%、80歳を超えた人の30~40%が、前立腺がんを持っているといわれます。
ただ、中にはもちろん悪性度が高く、進行が早い前立腺がんも存在します。
前立腺がんの治療選択肢
前立腺がんの治療には数多くの選択肢が存在します。治療法を選択する上で、前立腺がんのリスク分類は非常に重要です。このリスク分類の方法は、
PSA(前立腺特異抗原で腫瘍マーカーの1つ。生化学的指標)
TNM分類(病気分類で、CTやMRIといった画像検索によって決定される。T:原発巣の進行度合い N:所属リンパ節転移の有無 M:遠隔転移の有無)
Gleason Score(病理学的指標。前立腺生検を行い、採取した組織を顕微鏡で観察し、悪性度をスコア化する。10点評価で行い、点数が高いほど悪性度が高い。)
これら3つの指標を総合的に判断し、前立腺がんのリスクを分類します。
詳しい病気分類に関してはNCCN ガイドラインを参照ください。最新版は英語で、参照するためにはユーザー登録が必要となりますが、1つ前の版であれば日本語でユーザー登録なしで参照することができます。
これらのリスク分類に応じて標準的な治療選択肢が用意されています。
悪性度が低いということから低リスクの前立腺がんの場合、監視療法(定期的に検査を行って経過を観察する)も選択されます。
放射線治療 IMRT
前立腺がんの治療のうち、侵襲度が低く、幅広いリスク群に対して適応となるのが放射線治療です。前立腺の周囲には直腸や膀胱、場合によっては小腸といった放射線を当てたくない臓器が存在します。
それらの組織に放射線をできるだけ当てずに、前立腺(精嚢の一部または全部を含む)にできるだけ多くの放射線を当てるために有効な方法がIMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy):強度変調放射線治療です。
詳しい内容はまたどこかで解説します。
10年ほど前はこの治療を受けることができる施設は限られていましたが、現在では放射線治療装置を保有する多くの施設で受けることができるようになりました。
IMRTの恩恵は大きいですので、前立腺がんで放射線治療を受ける方はIMRT治療を受けることができる施設を探しましょう。
まとめ
前立腺がんは比較的悪性度の低い癌種です。
リスクごとに分類したうえで適切な治療が選択されます。
その中で放射線治療の果たす役割は大きく、中でもIMRTという放射線治療の方法は
非常に有益です。
前立腺がん→放射線治療→IMRT
IMRTで治療しましょう。