本当に怖い?!放射線
2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害およびこれに伴う福島第一原子力発電所事故による災害、東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)は、まだまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
この大きな災害以降、放射線=怖いという認識が一層高まりました。
しかし、その背景にはマスコミによる誇張された報道、それを鵜呑みにした国民の
誤った認識があるのも事実です。
原子力発電所の事故、あの現状は制御不能な状況であり、
先が読めないといった状況から怖い、危険だということは間違いありません。
↓以前の記事も参考にしてみてください。
一方で放射線というのは医療の現場で積極的に利用されています。
現代医療において放射線はなくてはならない存在です。
そんな放射線に対しても同じ放射線というくくりで、怖い、危ないと認識する方が
非常に多いわけです。あなたはどうでしょうか?
これは間違いです!理由は後ほど…
今回は医療に利用される放射線のお話です。
放射線って
放射線というと怖い、危ないという意識を持つ方が多いと思います。
では可視光線というとどうでしょうか?
これに対して怖い、危ないと考える人はほとんどいないと思います。
生活できなくなってしまいます。
なぜ、可視光線???と思ったあなた!
可視光線も放射線だからです。え!?そんなことは…
放射線といっても
- 電離放射線
- 非電離放射線
があります。
それぞれを見ていきましょう。
放射線が物質を通過するとき直接あるいは間接に
物質をイオン化することを電離といいます。
X線、粒子放射線、α線、β線、γ線、電子線などはイオン化能力があるので、
電離放射線と呼ばれる。また単に放射線というときは通常電離放射線を指す。
これに対し紫外線や可視光線は電離能力が皆無というわけではないが弱いので
通常は非電離放射線と呼ばれる。
- 電離放射線
物質を通過するとき直接あるいは間接的に物質をイオン化することを電離といい、
その能力を有する放射線を電離放射線といいます。
一般的に放射線というと電離放射線をさします。
具体的にはX線、粒子放射線、α線、β線、γ線、電子線などがこれにあたります。
- 非電離放射線
電離能力をほとんどもたない放射線を非電離放射線といいます。
具体的には電波,マイクロ波,赤外線,可視光,ブルーライト,紫外線などが
これにあたります。一般的にこちらを放射線ということはありませんが、放射線です。
↓こちらの本がとても分かりやすく書かれていてお勧めです。
放射線の危険性
これから先は電離放射線のみを扱い、放射線と記述します。
放射線が有する電離能力により、人体のDNAを損傷することにより、
人体に影響が出ます。
しかし、DNAには修復能力があるので、完全に修復されれば何の問題もありません。
DNAを修復できなかった場合、その細胞は死んでしまいます。
ある臓器の一部の細胞が死んでしまった場合でも、
増殖した正常細胞に置き換えられていくので、大きな障害は起こりません。
細胞が大量に死んだ場合は、臓器としての機能を失い、
場合によっては人が死亡する場合もあります。
つまり放射線の影響というのは電離能力により、
DNAを損傷することによりおこります。
医療での利用
しかし放射線は現代医療に積極的に用いられています。
放射線なしでは現代医療は成り立たないといっても過言ではないくらいです。
では、この放射線というのは危険なのでしょうか。
また人体に悪影響を及ぼすのでしょうか。その答えは“NO!”です。
なぜなら、医療に用いられる放射線はしっかり管理されているから。
原発事故により発生する放射線は絶え間なく出続けているのにたいし、
医療で用いている放射線は操作者が意図している間のみ決められた量が出ます。
(検査をしていないときには出ていない。)
また放射線を用いた検査を行う場合、放射線を受けるリスクをそれに伴い受ける
便益(ベネフィット)が上回った時にのみ行われるからです。
これは国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護の3原則の1つである
行為の正当化に当たります。
胸部レントゲンとX線CT
行為の正当化、非常に大事なことです。放射線検査を受けることにより放射線を浴び、
それに伴い体がダメージを受けていることは事実です。
しかしながら、その検査を受けることにより、病気が見つかり、
それに対し治療をうけることができるという利益を得るのです。
ではその被ばく線量はどの程度なのでしょうか。
代表的な線量を見ていきましょう。
病院で撮影される胸部レントゲン写真は1回あたり0.02~0.1 mSv程度です。
(撮影条件や診断法によって変動)
また、側面レントゲン撮影は正面レントゲン撮影の3~4倍の被曝量とされています。
飛行機に乗ると宇宙線に晒されますが、東京―ニューヨーク間往復で
0.11~0.16mSv程度被ばくされるとされていますので、
胸部レントゲン写真はこれと同程度の被曝量といえます。
胸部レントゲン写真の場合、通常の撮影では被曝が発がんのリスクになることは
ほとんどないでしょう。(ただし、このリスクがないことの疫学的証明は難しく、
いまだに世界各国の研究者の間でも意見が分かれています。)
胸部CTの場合、2.4~ 12.9mSv程度とされていますので、
被ばくとしては多くなります。
しかしながら、胸部レントゲンに比べて、
得られる情報量も格段に増えますので検査が正当化される場合は
行われます。
普通に生活しているだけでも放射線による被ばくはあります。
その被ばく量は日本での平均は2.1mSv程度といわれています。
↓こちらの本も参考にしてみて下さい。
まとめ
一般に放射線というと電離放射線のことをさし、その電離能力を持って
DNAを損傷するために、放射線による人体影響が現れます。
しかし医療現場では放射線を用いた検査によるベネフィットが放射線被ばくによる
リスクを上回る場合に(正当化)、放射線検査等が行われます。
その放射線は適切に管理され、検査の最中にしか発生しないため、
原発事故で発生している放射線とは異なります。
放射線は確かに人体に影響を及ぼしますが、
適切に管理し利用することにより、
大きな便益をもたらします。